八月も末、唐突に「レモンケーキを作りたい」と思った。たぶん夏だからだと思う。真夏の日差しを浴びてキラキラ育ったレモン、というイメージがあったけれど、レモンの旬は冬なんだそうだ。冬に商品展開される印象が全然ないぞ。うーん、納得はしてしまう。すっぱさっぱりを欲するのはやっぱり夏だ。冬もあったかいはちみつレモンはおいしいけど。
レモンケーキといえばあのレモンの形。上に真っ白のアイシングが乗っている焼き菓子を想像するし、私もそれを思い浮かべていた。でも、当たり前だけどあれはその型がないとできない。じゃあどうしよう。パウンド型でいいじゃん。焼ければいいのだ。正直言うと、レモンケーキがどんな形をしていようが私のテンションは変わらない。「レモンケーキ」の名を冠していながらレモンの味がしないケーキの方がかなしい。メロンパンじゃないんだから……。でもメロンパンはメロンの味がしなくてもいい。むしろしない方がいい。この一貫性のなさよ。
レモンケーキのレシピを調べてパウンド型で焼けばいいや、と考えていたのだけど、レシピ本をペラペラめくっていたら「ウィークエンド」というお菓子が目に留まった。これレモンケーキだ!! 初めてのお菓子だけど作ってみよう。なになに、あんずジャムを使うと……。ここで悪い癖が出る。「レモンジャムを作ってそれを使ったらもっとレモンになるのでは?」。
レモンジャムには普通のレモン、マイヤーレモン(オレンジとレモンのミックス)、思い付きでライムを使うことに。私は色々混ぜればその分おいしくなると思っている。根拠はない。皮はケーキにも使うので全部入れずにとっておく。ゆでこぼしてえぐみを取ってから刻み、薄皮を取った果肉と一緒に鍋に入れる。果肉を取るときにレモン汁が飛んできてひいひい言っていた。でもいい匂い。レモンの香りってすごく強くて、カットした瞬間にぶわっと広がっていく。酸味がすごいので、てんさい糖を多めに、はちみつも加えて。余ってるドライのカモミールをひとつかみ入れる。てんさい糖を入れたので当然茶色いジャムができた。
ケーキ本体はなぜか生地が型に収まりきらなかったので(なぜだ)小さな丸型に余りを入れて焼くことにした。そわそわしたけれど焼き上がりはまあまあの出来で一安心。焼き上がりにジャムを塗って、乾いたところにグラス・ア・ロー(糖衣がけ)をする。粉砂糖に水分を混ぜてつくるのだけど、どうやら「ウィークエンド」は入れるレモン汁が多めでとろとろと流れるくらいの固さらしい。これを全体にかけてから、高温のオーブンに2,3分入れてパリッとさせるのだ。こってりとした白いものもよく見る。あれは水分が少ないやつで、均一に伸ばすのも結構大変だった。あれもおいしいよなあ。


レモンの形をしたレモンケーキよりもできあがりはものすごく地味だけど、でもおいしそう。そのまま食べてもよかったのだけど、折角なのでレモンジャムも添えてみる。ケーキに使ったサワークリームが余っていたのでそれもたっぷり。貰い物のミントがあったので飾る。おお、かわいいぞ。結論から言うと、めちゃくちゃおいしかった。薄い糖衣のシャリっと感。レモンジャムがきゅんとするしっかりした酸っぱさで、それがサワークリームのまったりした舌触りとしっとりしながらも目の詰まったケーキによく合っている。生のミントはレモンに負けない爽やかさがあって、最後まで飽きない。ミントは飾りじゃないのだ。蛇足だけど、連続して動物性の材料不使用のレモンクッキーも作った。やっぱりレモンは夏になっちゃうな。